子供のいない夫婦は、遺言書を作っていないと、残された配偶者が故人の兄弟に遺産相続の話をしなくてはならない
民法上、子どもや孫などがいない場合で、親が健在だと、故人の配偶者3分の2、親が3分の1、親が亡くなっていると故人の配偶者に4分の3、親や兄弟姉妹に4分の1が法定相続分となります。
兄弟姉妹が亡くなっている時にはその子どもが相続人となり、ますます疎遠なことが多く、遺産相続の話の場を持つだけでも大変です。
残されたお金が老後資金なので放棄して欲しいとお願いするにしても、相続人が集まって、協議をして、全員の合意を得なければなりません。
疎遠になっていて、一同が集まることだけでも大変ですが、相続人の一人でも反対すれば実行ができません。
急に転がり込んできた遺産、もらいましょうかという人が出てくると、夫婦で老後のために貯めたお金を親戚に渡さなくてはなりません。
親が健在の場合は、遺言書で全額配偶者へとしていても、納得しない場合は遺留分を払わなくてはなりません。
しかし、兄弟姉妹には遺留分はありませんので、親が亡くなっていて、遺言書さえあれば、配偶者が全て相続することができるのです。
子供のいない夫婦は、親の遺留分は無くならないが、兄弟への相続の分は配偶者に全て相続させることができるので遺言書を書きましょう
子供のいない夫婦は、残された配偶者の負担を減らすために、遺言書を書き合いましょう
遺言の基本は、全て手書きで書いて、日付と署名は忘れないこと。実印で押印しておくと偽造の疑いを持たれません。(目録については緩和されました。法務局のサイトを参照してください。)
財産がどのくらいあるのか、列挙するような遺言書は、特に若いうちは預け先も流動的です。高年齢になっても、変更することを前提にまずはお互いに書き合いましょう。
若いうちは、ざっくりしたものでいいので、特に兄弟姉妹との争いにならないように、親へ遺留分も考慮した、簡単な遺言書を書いておくことをおすすめします。
配偶者に全額残したい場合は、遺言の中で、遺留分を請求できる相続人にその心情を書いてみてはいかがでしょうか。
それでも、遺留分を請求されたら、支払わざるを得ないということは念頭においておきましょう。
もしも、遺留分を争うことが予想されるのであれば、残された家族が争いの渦中におかれないために、初めから遺留分相当を相続させる遺言書を作成しておく方がいいのかもしれません。
残された家族の今後の付き合いや心労を考えて、遺言書は作成したいです。
遺留分(いりゅうぶん)とは
遺留分とは、法廷相続人の遺言によっても奪うことのできない、遺産の一定割合をもらう権利の留保される分のことです。遺留分を持っている人は、配偶者と子(代襲相続人を含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)です。兄弟姉妹は遺留分はありません。
しかし、遺言書がなければ、民法上の配分の通りに遺産が分けられますので、子供がいない夫婦の場合、直系に当たる両親や祖父母が亡くなっている場合には、兄弟姉妹(代襲相続人を含む)に遺産が分割されることになり、残された配偶者は、その人たちに連絡を取らなくてはならないことになります。
そして、4分の1の財産を分けなくてはなりません。
遺言を書いておけば、直系の親や祖父母への「法定相続分」3分の1の半分、6分の1を分けるとして、残りは配偶者に残せますし、直系親族が亡くなっていれば、兄弟姉妹には遺留分はないので、全額配偶者に残せることになります。
簡単な遺言書の例文【子供のいない夫婦の遺言書】
遺言書遺言者
日本太郎は、次のとおり、遺言をする。
1.妻 日本花子に全ての財産を相続される。
2.遺言執行者として前記 日本花子を指定する。
令和○年〇〇月〇〇日
東京都〇〇区〇〇〇〇
遺言者 日本太郎 印
遺言執行人(遺言執行者)も同時に指定しておいた方が良いです。
詳しくは、法律の専門家の意見を聞くか調べて、民法上認められている遺言書を書きましょう。
自筆遺言書の保管場所
遺言書を自宅で保管する場合
手続きをする必要がありますが、遺言書を自宅で保管していても構いません。
自宅に遺言書を保管していたり、自宅で遺言書を見つけたら、家庭裁判所に持参して、検印を受けます。
その際に、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらうますが、その選任に対しても争点になる場合があるので、遺言で指定した方がスムーズに進みます。
封筒に入れる必要はなく、封をしない方が面倒ではありません。封をしてしまうと、家庭裁判所で検印後でなければ開封できないなどの制約が出てきます。また、間違って開けてしまった場合、無効になる恐れがあります。
見つけた人は、家庭裁判所に届けて検認手続きをします。わかりやすいところに保管するか、信頼できる人に保管場所を教えておきましょう。
遺言のルールは民法に定められています。ルールから外れると無効となるケースもありますので、形式に沿った残しかたをします。
2019年1月から、財産目録は自筆でなくても、通帳のコピーや不動産の登記簿謄本のコピーで認められるようになりました。このとき、遺言書の中で、別紙として記載する必要があり、別紙の記載面のすべてに、自筆で氏名のサインが必要です。
自筆証書遺言保管制度
2020年7月からは、法務局で、手数料3900円で、遺言書を預かってくれる制度(自筆証書遺言保管制度)ができました。自宅に保管して紛失する恐れもなくなり、家庭裁判所の検認手続きも必要がありません。
自筆遺言書以外の遺言方法
弁護士に頼んで、遺言書を作るなら10万円から20万円くらいで、遺言を執行してもらう時には財産の1〜3%くらいだと言います。
公正証書遺言
公証役場で、2名以上の証人が立ち会い、遺言書を作ることができます。財産が100万円程度でも手数料は16000円以上になり、財産が増えるたびに手数料は加算されます。
秘密証書遺言
遺言者が作成した遺言者を公証人役場に持参し、遺言者本人が認める遺言書であることを公証人に証明してもらう遺言の方法です。手数料は11000円です。
無効になる恐れもある注意すべきこと【子供のいない夫婦が遺言書を作る時】
日付が吉日ではダメです。はっきりとした日付をかきましょう。また、修正加筆の方法に不備があってはいけません。
認知機能が衰えて正常な判断能力がない状態で作成されていたり、単独ではなくて複数人が共同で遺言していたり、自筆で書かれていないなど、無効になるケースがあります。
譲ろうと思っていた相続人が、先に亡くなった場合、遺言自体が無効となってしまう場合がありますので、その点を考慮して、二番目に相続させたい人を決めておくと、全てが無効になることを防げます。
まとめ【子供のいない夫婦は残された配偶者のために遺言書を作っておいた方が良い】
遺された配偶者やほかの家族の負担を減らすためにも、財産の目録が添付されている遺言書は残しておいた方が相続の処理がスムーズに行われます。
特に、兄弟が亡くなっていると、そのさらに相続人である甥や姪に話をして、相続を放棄してもらわなくてはいけません。放棄してもらえないと、お金を作るために、住んでいる家を売らなくてはならないという目にあう可能性も出てきます。
以前は、全て手書きでなければ認められなかった自筆の遺言書も、法律の改正により、財産目録はコピーも認められるなど、遺言書も書きやすくなりました。
遺言には、どうしてその財産をその人に残すかなど感謝の気持ちを書いても良いそうです。なぜそうしたのかがわかれば、無駄な争いを避けられるのかもしれません。
財産だけではなく故人の気持ちを残してあげると争いも減るかもしれません。
※関係法律についてはこちらを参考にしました。(参考: 民法第5編相続より/津野事務所サイトより)