『キネマの神様/原田マハ』のあらすじ(ネタバレなし)【2021/8 映画公開】
あらすじ
あらすじ
大手企業の課長であった歩は突然仕事を辞めた。その日に、父が入院して、またもや多額の借金が発覚した。
無職になった娘・歩は、マンションの管理人の仕事を手伝う。管理人日誌はまるで映画日記。友達の経営する小さな映画館「テアトル銀幕」でしょっちゅうみている映画の感想が書かれていた。
同じく映画好きの歩は、思わずその日誌に、映画のことを書き加えた。
退院した父は、娘の文章を見つけた。映画を愛する素晴らしい文章だった。
他の人にも読んでもらいと思った父は、娘には無断で、映画雑誌「映友」のサイトに投稿した。それをきっかけに、歩は映画雑誌の編集部に採用され、父も「ゴウ」という名前で、同じ会社のサイトで、映画ブログをスタートさせることになる。
英訳して世界に発信されるようになると、謎の人物ローズ・バッドと名乗る人物が反論をしてきた。
映画好きの爺さんゴウとローズ・バッドの応戦は、映画好きの間で評判となり、数多くの名画について議論を闘わせる。
ゴウとローズ・バッドの闘いの結末は?ローズ・バッドは一体誰なのか?歩たち家族はどうなるのか?
主な登場人物
娘(歩) シネコンを作るプロジェクト進行中の大手の会社の課長だった。根も葉もない噂に嫌気がさして突然会社を辞めてしまい無職になる。
父 映画好きな父親は、ギャンブル依存であちこちに何百万も借金があり、娘や妻になんとかしてもらうつもりで、自分で返す気がないダメ男。
母 娘に頼ってばかりで謝ってばかり。父の文句や愚痴ばかり言っている母親。
映画雑誌「映友」の女編集長 日本の映画の黎明期を支えるも業績悪化や息子の引きこもりに悩む。
ローズ・バッド 論理的な映画論を持っている謎のブロガー。
ページ数とジャンル、発行所
ページ数: 301ページ
ジャンル: 日本の小説
発行所: 株式外社 文藝春秋
第1版: 2008年12月15日
初出誌: 2007/7~2008/9 号「別冊文藝春秋」
本の中で出てくる映画や映画人【『キネマの神様/原田マハ』のあらすじ】
「ニュー・シネマ・パラダイス」
平成元年12月みる人を幸福にする映画。胸に染み入るオープニングの音楽が流れ出す。イタリア映画らしい、幸福感と哀愁がブレンドされた、ピアノとヴァイオリンの響き。
引用元/『キネマの神様/原田マハ』 より
ベランダの白い手すりの上の植木鉢によっていたカメラが、ゆっくりと後ろに引いていく。潮風がそよ吹くシチリアの白いベランダへと、あっというまにつれさられてしまう。
…
大人になって有名な監督になった主人公のトトのもとに、子供の頃に仲良しだった映画技師のアルフレードが亡くなった、というニュースが飛び込む。村の司祭の映画の検閲でキスシーンの全てカット。映画の回し方教えてよ。火事、失明。故郷を忘れろ自分をすることを愛せ。
「フィールド・オブ・ドリームス」
父親との和解。野球賛歌家族の愛/永遠の父親像にコンプレックスとノスタルジー。主人公レイ・キンセラ、アイオワかカンザスあたりで広大な土地の農場主か牧場主、バスルーム2つ以上ある一軒家、地元の野球ゲームをテレビ観戦する同じ価値観の妻と素直で元気な子供たち。70年代初頭UCバークレイ校を夫婦で卒業しているエリート。実現できなかった父親との和解。和解できなかった父と息子の現実。
「ワーキングガール」
ハリソンフォードがやさ男役で出ていて面白い。主人公はまるでお前のようなキャリアウーマンなのでつい肩入れして見てしまったよ。お前もいずれこのラストシーンのように重役椅子で高笑いかな。ハハハ……/ニューヨークのしがないOLが恋も仕事も勝ち取るサクセスストーリーだ。主人公が重役室で勝ち誇るラストシーンに、父は私を重ね合わせたのだろう。
引用元/『キネマの神様/原田マハ』 より
「カッコウの巣の上で」
ちぇっ、いばってやがる。あの人を見てると「カッコウの巣の上で」のラチェッド婦長を思い出すんだよなぁ。たしか、ルイーズ・フィレッチャーだったかな。ねちっこくて意地悪な婦長でなぁ。まったく、ジャック・ニコルソンも反乱したくなるってもんだよ。でもルイーズ・フレッチャーはあれでアカデミー賞取ったんだからなぁ
引用元/『キネマの神様/原田マハ』 より
「テルマ&ルイーズ」
あれはお前みたいなキャリアウーマンの話じゃないけど、女性が見るべき映画だろ。女であることの苦悩とすばらしさがあちこちに出てる。あのラストシーン、すごく悲しいんだけど、同時にスカーッとするよなぁ。
引用元/『キネマの神様/原田マハ』 より
その他の映画
本の中の映画のラインナップをみると、心が躍ります。
どれもこれも有名な映画ばかり。映画なら観たことのある映画ばかりではないでしょうか。
私なら、「今を生きる」も入れておきたいなぁなどと、個人的に好きな映画も思い出します。
「セックス・アンド・ザ・シティ」「24」「自転車泥棒」「或る夜の出来事」「カサブランカ」「シャイニング」「ライフ・イズ・ビューティフル」「グッドナイト&グッドラック」「ブロークンバック・マウンテン」「ローマの休日」「あなたがいたら」「モーリス」「予告された殺人の記録」「花嫁のパパ」「アバウト・シュミット」「Marianne de ma Jeunesse」(フランス映画)「サスペリア」「時をかける少女」(アニメと実写)「市民ケーン」「ロビンフッドの冒険」「シェーン」「荒野の七人」「小説家を見つけたら」「プライベート・ライアン」「タイタニック」「アメリ」「戦場のピアニスト」「イングリッシュ・ペインシェント」「Shall we ダンス」「七人の侍」「ALWAYS 三丁目の夕日」「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」「ララミー牧場」「インディージョーンズ 最後の聖戦」「ターミナル」「ビッグ・フィッシュ」「猿の惑星」「フォレスト・ガンプ」「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」「リトル・ミス・サンシャイン」「アダムス・ファミリー」「ゴースト ニューヨークの幻」「天国から来たチャンピオン」「黄泉がえり」「河童のクゥと夏休み」
本の中で出てくる映画人
キーファー・サザーランド、ヨン様、バスター・キートン(満州の日本人専用映画館で見た喜劇王)、オードリー・ヘップバーン、淀川長治、ビビアン・リー、スカーレット・オハラ、原田知世、オーソン・ウェルズ監督、(ハリーポッター)、(キャプテン・ジャック・スパロウ)スピルバーグ父親への固執。ティム・バートン監督ディカプリオ、ブラピ、デヴィッドリンチ、ジョージルーカス、ハリソンフォード、ジャックニコルソン、マーティンスコセッシュ、ロバートレッドフォード、ロバートデニーロ、黒澤明、ユルブリンナー、マレーネ・ディートリッヒペドロ・アルモドバル監督(スペイン人)
映画『キネマの神様』のあらすじ【映画と原作とは違う】
映画のあらすじ【映画『キネマの神様』】
無類のギャンブル好きなゴウ(沢田研二)は妻の淑子(宮本信子)と娘の歩(寺島しのぶ)にも見放されたダメ親父。
映画『キネマの神様』公式サイトより
そんな彼にも、たった一つだけ愛してやまないものがあった。
それは「映画」−−− 。
行きつけの名画座の館主・テラシン(小林稔侍)とゴウは、かつて映画の撮影所で働く仲間だった。
若き日のゴウ(菅田将暉)は助監督として、映写技師のテラシン(野田洋次郎)をはじめ、
時代を代表する名監督やスター女優の園子(北川景子)、
また撮影所近くの食堂の看板娘・淑子(永野芽郁)に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。
そして、ゴウとテラシンは淑子にそれぞれ想いを寄せていた。
しかしゴウは初監督作品の撮影初日に転落事故で大怪我をし、その作品は幻となってしまう。
ゴウは撮影所を辞めて田舎に帰り、淑子は周囲の反対を押し切ってゴウを追いかけて行った・・・。
あれから約50年。歩の息子の勇太(前田旺志郎)が、古びた映画の脚本を手に取る。
その作品のタイトルは、『キネマの神様』。それはゴウが初監督の時、撮影を放棄した作品だった。
勇太はその脚本の面白さに感動し、現代版に書き直して脚本賞に応募しようとゴウに提案する。
最初は半信半疑で始めたゴウであったが、再び自身の作品に向き合う中で、
忘れかけていた夢や青春を取り戻してゆく−− 。
これは、“映画の神様”を信じ続けた男の人生とともに紡がれる
愛と友情、そして家族の物語。
映画と原作は別物【映画『キネマの神様』】
どの映画もそうですが、映画は映画監督の世界ですし、本は作家の世界です。
原作と同じかどうかではなく、別物をして捉えた方が楽しめます。
映画【映画『キネマの神様』】
山田洋次監督の世界です。映画を作る人たちの映画を思う気持ちや、愛情、友情を描いた人情もの素敵な映画です。
現在に生きる人よりも、過去に映画を撮っていた時代の人が多く描かれています。
志村けんさんはの追悼映画のような意味も持ってしまいましたが、それも含めてこの映画が歴史的に意味がましたのではないかと考えます。
「キネマの神様」映画が公開されます。(2021/08/06金曜日 公開)当初、志村けんさんが、菅田将暉さんと二人で主役をやる予定でした。新型コロナに感染し、残念ながらこの世を去った代役には、志村さんと長い間交流のあった沢田研二さんが務めることになりました。
原作【映画『キネマの神様』】
原作、映画を愛する映画ファン側の話です。人生の映画がある喜び、映画の力に奇跡を感じます。
そして、原作の奇跡は、私の人生にも訪れるのではないかと思わせてくれます。
映画を愛する今を生きる私たちの話だと思って読んでしまう本でした。
まとめー『キネマの神様/原田マハ』のあらすじ(ネタバレなし)【2021/8 映画公開】
「キネマの神様」を読むと、地元の小さな映画館を探して、そこで映画を観に行きたくなりました。
今までは、新作をやっていないとか、マイナーな映画だしとか、見向きもしなかったくせに……です。
探し出して上演作品を見てみると、派手さはないけれど、きっと良い映画なんだろうなと思える作品が並んでいます。
私、決めました。
これからは、小さな映画館で、流行りや娯楽の映画だけではなく、心に残るような映画も観ます。
原田マハさんの作品は、価値観とか時間の使い方も変えてしまう力のある作品ばかりです。
今回の「キネマの神様」も、思いもしなかった世界を見せてくれました。
「キネマの神様」おすすめです。