あらすじ【「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ 売春島/高木瑞穂】
島から泳いで逃げできたと言う当時17才の女の子の告白。大好きな彼氏だと思っていた男に売られてその借金を払うために働かされていた。置屋のママは母親のように女の子と接する。アメとムチを使って女を管理して働かせる。多重債務の家の娘や薬やホスト通いで借金が払えなくなった子が連れてこられたり売られてきた。
もともと、江戸時代から大阪と江戸を結ぶ航路上の港町で、天候が悪くなると風除けのために帆船が風待ちのために停泊していて、貧しい人たちは、その船乗りが相手に菜売りなどで船に近づき縫い物や洗濯夜伽などでお金を稼いだ。
三重県津市にあった予科練が、潜水艦や回天を隠す避難壕を掘ったりするのに渡鹿野島に500人もの人を民泊させた。島には釣りや開放的な売春が盛んなことを知り、戦後、全国に散らばった予科練生が知り合いを伴って遊びに来て全国に広まったという。
芸妓奥屋があって、島では売春で儲け話があるとの口コミで四国や九州出身の四人の女性が島にやってきたあたりから、スナック形式の売春置屋が盛んになった。島の人は、昔からの芸者遊びも盛んだし、菜売りもあったし、性に関して忌み嫌う風習もなく、売春で島は潤っていった。ヌードスタジオという名のストリップ小屋も二件あった。四人の中の一人の女将のホテルつたやがダントツ一人勝ち状態だったが、島全体が売春を軸にした商売のシステムが出来上がっていた。その後、経営コンサルタントを名乗る詐欺のせいか、大掛かりなホテルへの設備投資と時代の流れのせいか、カジノまでには手を出したやりすぎのせいか、となりの賢島のサミットのせいか、島は衰退していく。クリーンなイメージに変化させようとしてはいるが何もない島はその後道筋が見えない。最後に残る置屋は、その四人のうちの他の一人の店。
再建しようとホテルを買った人が、行政の高い評価額のせいで固定資産税で身動きが取れない。かつてバブル期のゴルフ場のように、資産を市に寄付して固定資産税の何分の1かでかしてくれるように交渉しているらしいが換金できない資産はいらないと言われているようだ。
読んで感じたこと【「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ 売春島/高木瑞穂】
昭和の温泉街【「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ 売春島/高木瑞穂】
昭和の頃、会社の旅行で近郊の温泉街に泊まりにいっていた頃、コンパニオンを呼ぶのは当たり前だった。
宴会場での一次会が終わると、コンパニオンの中のリーダーが幹事に二次会の延長の交渉をしているのを横目で見ていた。会社としては延長しないが個人的には構わないという方針なのもいつものこと。
毎年、どこの温泉に行っても、だいたい同じパターン。そんな時代の話を思い出す本だった。
地方おこし・地方創生【「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ 売春島/高木瑞穂】
今、世の中が大きく変わっている。生き方も、働き方も。
寂れて死んだようになった街が生き返るには、どうしたらいいのかわからない。
バブル期の大きな箱物がある場合、足かせになるのが高い評価額のままの固定資産税だ。タダ同然の大きな不動産は、廃墟であっても高額な評価額がついていることがある。改装や改築用の資金が固定資産税となってしまっては、いつになっても街は活性化しない。
本の中でも話しているが、バブル期のゴルフ場の乱立で潰れてしまったゴルフ場は持ち主が行政に資産を寄付して、賃料を払って借りる契約を結ぶことで、高額な固定資産税を払わず、会社も潰れることなく営業を続けることがあった。行政も固定資産税は入らなくても、ゴルフ場が運営され、雇用や観光客の確保を続けられることとなり、両方にとっていいことになる。このように、行政も街の発展のために、何がいい方法なのか一緒に考える姿勢がないと街は活性化しない。
廃墟に高い評価額をつけて固定資産税を取ろうとしているのに、その価値が高いと評価している市に寄付をすると言っても価値がないからいらないという。それなら価値が低いのなら低いなりの評価をしなおして、固定資産税を決めるべきだと思うが、財源となる固定資産税はなかなか低くはならないようだ。
そんな八方塞がりの話を読むとあまりすっきりしない。
この後、『奇跡の熱海』でも読もうと思う。
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