空手の形をやりたい人はどの流派で習ったら良いのか
オリンピックの空手女子形の銀メダルを取った清水希容選手は「糸東流」です。
オリピックの空手男子形で優勝して金メダルを取った喜友名 諒選手は「劉衛流」です。
日本で空手を学び優勝を狙う選手のほとんどは、決勝戦で自分の流派の最高峰の形を得意形とし、その形を持ってくるような戦術で戦います。
世界で空手を稽古する選手は、流派を選ぶほど道場がある地域ばかりでもなく、わざわざ沖縄に通ったり、インターネットを通じて学んでいる選手もいるようです。
近年は、糸東流の最高峰の形、チャタンヤラクーサンクーを決勝でみる機会が多いです。チャタンヤラクーサンクーを習いたいなら全日本空手道連盟の四大流派で言えば糸東流の系統です。
もともと、沖縄の喜屋武 朝徳(きゃん ちょうとく)氏からの流れの沖縄空手の流派で稽古されています。
世界一美しい空手の形として全世界に名を轟かせた宇佐美里香さんも糸東流です。有名になったあのシーンは、チャタンヤラクーサンクーを披露したものでした。
大会で優勝したり、世界的に有名になるとその形を使う選手が増えます。
清水希容さんや宇佐美里香さんに憧れて、空手の形をやってみたいと思ったのであれば、糸東流をお勧めします。
しかし、良いなぁと思っている憧れの選手が、違う選手だというなら、ちょっと待ってください。
自分の憧れた選手の形が、糸東流では学べないかもしれません。
喜友名諒選手の劉衛流を習いたい人は
劉衛流は、仲井間憲里氏が中国から中国から持ち帰った流派で、一子相伝を貫いていました。
劉衛流4代目の仲井間憲孝氏の時に、門戸を開いて弟子を取るようになり、その弟子の中の佐久本嗣男氏が、世界空手道選手権大会3連覇、ワールドケームズ2連覇、ワールドカップ2連覇という、ギネスブックレコードに残るような世界チャンピオンになったことでその名を轟かせました。
沖縄空手の劉衛流の道場は、沖縄以外では見つけることができませんでした。
しかし、オンラインや実際に沖縄に行って受けられる講習会があります。
劉衛流を習いたい人は、まずはDVDなどで形の順番や基本的なことを学んだのちに、こちらのサイトのようなセミナーを受講してみてはいかがでしょうか。
劉衛流を学べるDVDなど
プレミアムリーグに参戦していた日本人選手の流派
男女一名ずつのオリンピック代表選手になるために、プレミアムリーグに参戦していた日本人選手の流派を調べてみました。
清水希容選手の流派は糸東流
オリンピックの銀メダリスト清水希容選手は糸東流です。バランスの良さとキレが抜群な清水希容の形は、軸がブレずに良い美しい形です。
清水希容選手が優勝した「第47回全日本空手道選手権大会の動画」はこちらです。
大野ひかる選手の流派は剛柔流
オリンピックの代表を争った大野ひかる選手は剛柔流です。武道を貫く精神を感じて惹かれます。見栄えがするような大げさな動きではなく、不必要を排除することを貫く美しい形です。
2020年大野ひかる選手が優勝した「第48回全日本空手道選手権大会」の動画はこちらです。
岩本衣美里選手の所属は和道流
もともとは和道流の所属ですが、喜友名諒選手と同じ劉衛流の形で競技に出ているため岩本選手が試合で行っているのは和道流の形ではありません。
岩本選手のプレミアムリーグなどで見られる重厚な形に憧れるなら、劉衛流に師事した方がいいと思います。
喜友名諒選手の流派は劉衛流
オリンピック金メダリスト喜友名諒選手は、沖縄空手の劉衛流です。あの重厚感、ムチミ。男子形の中では圧倒的だと思います。武道としての形をあそこまで極めたら競技空手であろうが関係ないと言う感じです。
喜友名諒選手からは出てくる気を感じます。ピタッ止まるとか、突きが速いとかだけではないのです。戦っている敵が見えてきますし、当たったらダメージを受ける攻撃だとわかります。それを感じる選手は稀だと思います。
喜友名諒選手が優勝した2019年第47回全日本空手道選手権大会の動画はこちらです。
本一将選手の流派は松濤館流
本選手の流派は松濤館流です。小さな体が大きく見える形は、身体能力の高さを感じさせます。本選手の形は、会場の空気を変える華やかで力強い形です。
本選手のガンカクの動画はこちらでみられます。
新馬場一世選手の流派は糸東流
新馬場一世選手は糸東流です。女子形で世界選手権4連覇している若井敦子さんが総監督を務める西濃運輸の所属です。
オリンピックで使える形とルール
オリンピックで使える形は約100種類で、世界空手連盟が認定する形名の中から選びます。正しい形が行われているかを評価する技術点が7割、スピードや力強さ、ダメージを与えるような突きや蹴りになっているかをみる競技点3割で採点します。
また、一度行った形は同じ試合では二度と使えないため、早い段階で強敵と当たったときに得意な形を使うか、決勝まで残しておくかなど、選手の作戦や駆け引きも見どころの一つです。
オリンピックで使用できる現在102ある形の名前に興味のある方は、下のブログ記事を読んでみてください。
全空連に所属する団体を大きく系統で分けた四大流派ごとの指定形など
四大流派とは、糸東流、剛柔流、松濤館流、和道流です。
糸東流は第一指定形がバッサイダイとセイエイチン、第二指定形はニーパイポと松村ローハイです。
剛柔流は第一指定形がセーパイとサイファ、第二指定形はセーパイとクルルンファです。
松濤館流は第一指定形が慈恩(じおん)と観空大(かんくうだい)、第二指定形は燕飛(えんぴ)、観空小(かんくうしょう)です。
和道流は第一指定形がセイシャンとチントウ、第二指定形はクーシャンクーとニーセーシです。
形は、まずそれぞれの流派の基本形を学びます。地方大会で予選で使われたりします。糸東流は平安初段から五段、剛柔流はゲキサイ第一・第二、松濤館流派は平安初段から五段、和道流ピンアン初段から五段を学びます。
全空連の共通認識されたこれらの基本形や指定形は書籍やDVDになっています。改訂も行われますので、必要な人は、調べて最新の教範やDVDかBlu-rayの購入をしてください。(空手ビデオ、本に興味のある方はこちらへどうぞ)
基本の形はYouTubeでも無料で確認できます。興味のある方は、こちらの「YouTubeで学ぶ基本形【全日本空手道連盟/JKF】」をクリックしてください。基本形のYouTubeアドレスやその他の形の資料がわかります。
フルコンタクト以外の伝統空手はどこも同じで形は好きなのをしたら良いんじゃないの?
違います。同じではないのです。
空手の流派は沢山あり、「創始者が流派を立ち上げる」ことで誕生しますから、どのような稽古をしてきたのかで、学んできた形は違います。全ての形を学ぶわけではありません。
歴史のある沖縄の空手や四大流派などは、どんな形を学べるか、流派の名前を聞いただけで予測がつきます。
しかし、新しく誕生している流派や、流派もない団体のところもありますから、学ぶ際には質問してみると良いでしょう。
今回はオリンピック選手のような…というブログタイトルにしましたので、オリンピックのルールを守って出場するために所属していなくてはならない全日本空手道連盟に加入している空手の流派についての話を主にしています。
全日本空手道連盟に加入しているかどうかは各団体に聞いてください。
流派の違いは空手の形の特徴の違いにつながる
空手の四大流派は、前述の通り、「糸東流」「剛柔流」「松濤館流」「和道流」です。
沖縄空手の三大流派は「小(少)林流」「剛柔流」「上地流」です。
先人の理論の違いで、先人の教えに基づいた空手を一人で稽古ができるように形があります。
流派の違いは、理論の違いですから、その流派の理論に基づいた形を練習する必要があり、流派によって大事に思っている形は異なります。
同じ基本の形でも流派によって解釈が異なり、蹴りの種類や蹴る位置、引き手の位置も異なっているのです。どれが正しいとか間違えとかではありません。考え方の違いです。
どれも一理あるのです。お互い違っていて、お互いを認めて共存しています。先人の教えを理論で理解して、体現できるように、形を繰り返し稽古をしています。
空手を学ぶ者の多くは、武道の精神で空手を行っているので、試合に出て勝つことを目標としているためだけに形を稽古しているわけではありません。
もちろん、オリンピックなど大きな大会に出るからには、勝ちたいのは当然です。だからと言って、そのために理論を捻じ曲げることはありません。
オリンピックが行われ、空手がスポーツとして捉えられ、世界空手連盟(WKF)では、指定形が撤廃され、伝統的な形であればOKということになっています。
競技として捉え、より速く、より力強く見えるように理論の範囲内で行うことは大事です。勝ちたいと望むのであれば、こだわって、主に外国人選手に見られるように、流派に拘らない、ジャッジが高得点を出しやすい形を研究して形を打つような、空手道ではなくKARATEとして、スポーツ、競技空手の一つの道だとの考えも出てくるでしょう。
喜友名諒選手が世界大会で使用して優勝を続けていることやオリンピックで金メダルを取ったことによって、沖縄空手の一つである「劉衛流」のオーハン、オーハンダイ、アーナン、アーナンダイが世界大会で使われる頻度がますます増えていくと思われます。
DVDや沖縄の劉衛流のセミナーを受けるなどして、世界のトップクラスの空手家は学んでいます。
空手の形を繰り返し稽古することの重要性
小さな子供から老人、初心者から高段者まで、同じ形を練習しています。それぞれのレベルに応じた自分の課題を克服するべく、自分の中で目標を持って稽古をしています。
そして、稽古を続けると、修行してたことを身体が覚えていること、今日よりも明日、なんらかの成長が出来ることを知っているのです。
成長は体だけの話ではありません。精神や心、考え方、人との間合いなどコミュニケーション能力など様々なことにつながります。
形の稽古だけをして、組手とか痛いことはしたくないんだけど
空手は基本と組手と形と、バランスよく稽古するものです。
怪我をしないような配慮はどこの道場でも行っていると思います。コントロールできない未熟な技をコントロール可能な技にしていくのも稽古です。組手のような実戦で使うような突きや蹴りができないと、生きた形にはなりませんので、稽古は必要です。
そうは言っても、教える先生の方針があります。組手の強い道場では、形の稽古の時間が少なく、組手の練習が多いです。身体そのものを鍛える理論を持つ道場もあります。習いに行くときには一度見学に行き、形の稽古の時間はちゃんとあるのかを確認して、自分で納得した道場に行くことをおすすめします。
そして、形が習いたければ、形の得意な先生、もしくはこんな形をやりたいと思う先輩のいる道場に行きましょう。
武道としての形
武道として形を稽古をしたいのならどの流派でも構わないと思います。
生涯修行できる空手、難しく考えず、通いやすいとか、あの形やりたいとか、楽しいとか、きっかけはなんでもいいので一回やってみたら良いと思います。
通う高校や大学によっては、子供の頃に何の流派であったか関係なく、その部活の流派にさせられます。色々経験してみたら良いのです。逆に言えば、一つの道場が嫌でも、自分に会う空手道場はきっとあります。空手が好きで道場や師が合わなければ変われば良いのです。
違うスポーツに興味があって空手をやめてしまっても、結婚や出産して休んでも、また戻ってきたくなる空手は、左右対象の動きであり、心身の健康にとても良いのです。
親子で空手を習うことの利点
子供が空手をやるなら、保護者も一緒に習ったら良いと思います。
送り迎えして見学しているならなおさらです。保護者の方が夢中になり、生きがいや生き方が大きく変わる人たちが少なくありません。
自分が空手をやらないなら、子供の稽古に口を出さない方が良いです。
師と弟子の間に稽古をしない人間が、空手のことに意見して、プレッシャーをかけたり叱ったりすることは、せっかくの教えや考えさせていることを邪魔してしてしまうことがあるからです。
アドバイスするなら自分も習って、一歩前を歩いて、先輩として堂々とアドバイスするか、背中を見せるのが良いと思います。子供も文句を言いながらも、矛盾は感じないと思います。
空手を習うことは、人生を生きるヒントになる気づきを得られるかもしれません。しかし、空手だけで教育やしつけが完結するわけではなく、家庭に学ぶ日常の教えに勝るものはありません。
まとめーオリンピック選手の形に憧れている人が空手を習うなら
やりたい形があるのなら、憧れの選手と同じ流派が良いです。
武道として修行する稽古に憧れるならどの流派でもいいと思います。
ここでは、全空連所属の空手の団体の話をしましたが、オリンピックには全空連のルールでなければ出られませんが、フルコンタクトなど独自の世界大会を行っている団体もあります。
特に考えてなければ、通いやすい自分の生活に都合の良い道場に見学に行って、ワクワクしたらすぐに習いましょう。
なんでもそうですが、やってみて合う合わないがわかると思います。
そして空手は、ハマったら半端なく好きになること請け合いです。一生、稽古し続けることになるでしょう。
空手は良いです。生涯の友となり、支えとなり、自己肯定感と修行の場を与えてくれます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
骨になるまで稽古したい気持ちをNFTにしました。こちらも見ていただけると嬉しいです。
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